2014

「影」落とす橋下政治?大阪広域水道企業団の苦悩

 
 橋下政治の源流は、大阪広域水道企業団の設立に遡ります。その企業団が経営する3つの浄水場のひとつ、野村浄水場(大阪府枚方市)を10月6日に、視察しました。
 橋下徹 前大阪府知事 (現大阪市長) の誕生にまつわり、解消されるべき「二重行政」の象徴としてターゲットにされたのが、大阪府と大阪市の水道行政でした。両府市の水道事業統合の手段となったのが、大阪広域水道企業団です。
 そもそも、浄水場をはじめ同企業団の水道施設は、大阪府営として運営されてきました。それが4年前、大阪府が新たに府下の42自治体を加えて構成する企業団を立ち上げるとともに、同企業団に水道施設などを無償で譲渡したものです。
 しかしその後、42自治体と大阪市(橋下市長)による統合案を大阪市会が否決。大阪市抜きの水道企業団として現在に至っています。
 この視察で見えてきたものがあります。それは「二重行政の解消」の目的と効果が歪んでしまったと思わざるをえないことです。水道施設を有する大阪市を加えた統合が挫折したにもかかわらず、構成団体の42自治体の負担を求めずに、水道の統一料金制度を維持、さらに料金値下げを追求する、と同企業団は説明します。
 統合効果を担保する数少ない残された手段に、大阪府水道部職員の同企業団への退職転籍と賃金等人件費の削減という、結局のところは水道事業の担い手のみに過度に負担を強いる、あまりに安易な方法を選択したという事実です。今後の15年間で府職員の給与水準の8割までに引き下げると。その結果、経験のある若い府職員の企業団への転籍が進まず、この3年間で未経験の新規採用者が企業団職員の3割を占めるまでになったとも。「水道技術の継承が持続できるのかどうか不安だ」と同企業団の担当者は話してくれました。
 かつては、もてはやされた橋下政治の「光」。その象徴にしようとしたはずの水道行政に、いまや暗い「影」を落としていると、わたしには思えてなりません。
 

大阪広域水道企業団の野村浄水場(10/6大阪府枚方市)