調査報告・韓国ソウル市の風格ある並木道づくり
風格ある並木道づくりに力を注ぐ韓国の首都ソウル特別市の取り組みを9月上旬に視察しました。
福岡市は、横浜、大阪、名古屋、札幌に次ぐ、政令市人口第5位の大都市に成長。政令市誕生から45年。追いつき、追い越せのキャッチアップ意識に終始してきましたが、もうそろそろ大都市に見合った内実、風格をそなえた福岡市にステップアップして欲しいと思うのは私だけではないはずです。
旅をすると、都市の佇まいにその地の人びとが何を愛し、大切にしているのかを感じることができます。時間をかけて育てなければならない街路樹、並木道などはその典型です。普段に暮らしてその見えないものを探して、韓国ソウル市を訪れました。歩道に大きな影を落とす見事なまでに成長したイチョウ並木。街路樹のうち約4割がなんとイチョウ並木とのこと。確かに、ソウル市官庁街のベンチに腰を下ろした私への残暑の強い日差しを遮ってくれたのもイチョウの大木でした。
福岡市でもイチョウの街路樹には、熟した実の落ちる秋になるとその悪臭に市民からの苦情が寄せられますが、私の訪韓した理由は風格のある並木道づくりとともに、イチョウ並木をこよなく愛するソウル市民の本音と並木を守り育てるソウル市の努力の実際を知り、学びたいという思いからでした。官庁街の一角にあるソウル市庁別館に入る同市都市景観室を訪ねました。
ソウル市庁担当者たちのイチョウ並木への並々ならぬ思いとは別に、銀杏の悪臭に対する苦情が多いのも事実のようです。ソウル市にある街路樹の4割を占める11万本がイチョウ並木。そのうちの3割弱が雌木です。国の発展を写し見るように愛され大切に育てられてきたものも、時代の変化とともに、熟し落ちた銀杏の放つ悪臭への苦情にソウル市庁は頭を悩ましている様子。
そこで、同市都市景観室のとった対策は、銀杏の実を採取する27の機動班を編成。「ダイヤル120」に苦情が寄せられると24時間以内に即時処理するという徹底ぶりには驚かせられました。銀杏の採取で実力を発揮するのが、5年前から導入したエンジン動力型振動収穫機というもの。オリーブの実を採るために開発されたもので、一台40万円の機器をこれまでに7台輸入したそうです。福岡市の見習う取り組みも多いことを実感しました。
雌木(めぎ)、雄木(おぎ)の識別にDNA鑑定の技術を開発。また横断歩道、バス停、地下鉄出入り口付近などの人が多く集まる場所や苦情陳情の多い樹齢20年未満の雌木を雄木に植え替える、あるいは雌木を移設するとのこと。来年には、イチョウの植え替えについて長期プランを立てると都市景観室長のチョさんが誇らしげに語ってくれました。