「行政サービスの受益がない」「税使途決める地方参政権もない」
外航船員の市民税減税めぐり論戦
さまざまな船舶の乗組員で組織する全日本海員組合の皆さんが、個人市民税の減税を今年6月、福岡市長に要望したことを受けて、10月10日の決算特別委員会総会で質疑しました。個人市民税の減税を求めているのは、長期間にわたり外洋の船上で就労生活する、遠洋マグロ漁船、海外施網漁船、漁業取締船・監視船、捕鯨船などの乗組員たち。欧州、東アジアの主要国では「自国船員の優れた海技の保護」「行政サービスを受けていないことへの補償」などを理由に所得税等が減免されています。
さて福岡市民である64名の乗組員たち(海員組合調べ)は、福岡市の行政サービスをほとんど享受できないにもかかわらず、個人市民税を支払い続けています。この理不尽さについて、当局側と議論を交わしました。
論点はつぎの3つです。①船員を対象とする市民税の減税が法律上許されるか、②市民税は行政サービスの受益に対する負担であると解釈できるか【表紙写真】、③地方参政権が閉ざされながらも市民税を払い続ける理不尽さをどのように考えるか【図表2】、を福岡市長に問うものでした。福岡市の答弁は①を除き、②および③については論点をかわした残念な回答でした。受益者負担の性格を有するとされる市民税のとりわけ均等割(3,500円)に踏み込まず、税金の使い道を決めるに等しい福岡市長選挙や市議会議員選挙などの地方参政権から事実上排除されていることに対する福岡市の見解を述べることもありませんでした。
ただ船員を対象にする減税制度について質疑応答を通して、市は不均一課税など地方税法で可能であることを事実上認めたことは、今後の議論進展に余地を残す結果を得ました。