平成29年度福岡市議会 条例予算特別委員会総会質疑応答全文

 

■分譲マンションにかかる住宅宿泊事業法(民泊新法)6月15日施行に向けた対応について
 
問【栃木】
1.すべての住宅で民泊事業を営むことのできる住宅宿泊事業法(民泊新法)が6月15日からスタートします。すでに先週の3月15日から民泊事業者の届出受付が福岡県で始まりました。民泊利用者による騒音やごみの散乱などを危惧する住民の声がニュース報道で紹介されており、分譲マンションのなかには臨時総会を開き、区分所有者4分の3以上の議決により「民泊禁止」の管理規約改正手続きをして、同法施行に向けた対策を講じた管理組合もあると聞きます。しかし、すべての管理組合が新法について十分に認識し、対策を講じているのかと言えば疑問が残りますので、分譲マンションにかかる住宅宿泊事業法(民泊新法)の施行に向けた福岡市の対応について質問いたします。そこでまず、本市内において、分譲の集合住宅(分譲マンション)の戸数と住宅戸数の占める割合を聞きたい。
 

回答【住宅都市局長】
○居住世帯のある住戸数744,700戸のうち,持ち家の共同住宅は132,200戸 
割合は17.8%となっている。
(※平成25年住宅・土地統計調査)
 

問【栃木】
2.分譲マンションの管理規約について、その有無は把握しているのか知りたい。また民泊新法にかかる相談件数、内容について聞きたい。あわせて民泊を禁ずる管理規約に改正した分譲マンション管理組合数を知りたい。
 

回答【住宅都市局長】
【管理規約】
○分譲マンションの管理運営の課題や実態を把握し,支援策の検討資料とするため,5年ごとにマンション管理組合を対象に実態調査を実施している。
○直近の調査は平成28年度に実施,管理規約の有無に関する質問に対し,回答のあった約1,000件の内,97.1%の管理組合が規約を持っている。
(調査対象件数:3,778件に対し,回答があったのは1,167件(回答率約31%))
【相談件数等】
○民泊新法に伴う,管理規約改正に関する相談状況は,電話対応や相談コーナーへの相談等で42件となっている。(H29.4~H30.2)
○相談内容は民泊に関する手続きや規約の改正方法に関するものなど。
【規約改正を行った管理組合について】
○福岡市内の分譲マンションについて,改正の有無については把握できていない。
○(一社)マンション管理業協会が,平成30年2月に行った調査では,全国約87,300の管理組合の内,管理規約の改正や理事会等の決議により民泊を禁止とした管理組合は約70.300組合(80.5%)と聞いている。
 

問【栃木】
3.分譲マンションの管理組合が民泊新法の6月15日施行の事実を十分に認識しているのか疑問だが、本市の認識と対応について聞きたい。
 

回答【住宅都市局長】
○民泊新法においては,住宅提供者が民泊事業の届出を行う際に,マンション管理規約などにおいて,民泊が禁止されていないことの確認が求められる。
(施行規則第4条第3項)
○トラブル防止のため,個々のマンションにおいて民泊を規制する場合は,管理組合として禁止することを管理規約などで明確にしておく必要がある。
○平成29年9月から福岡市HPでの公表,10月には市政だよりへの掲載に加え,12月には,200名以上が参加されたマンション管理セミナーでの周知を行い,さらに管理組合へ直接通知文書を郵送するなど,機会をとらえて周知徹底を図っている。
 

問【栃木】
4.「トラブル防止のため、個々のマンションにおいて民泊を規制する場合は、管理組合として禁止することを管理規約などで明確にしておく必要がある」と答弁されたことについて、念のためにお尋ねする。「区分所有者は、その専用部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない」とする管理規約をもつマンション管理組合は多いと思うが、このような文言の管理規約でマンション専有部分を使用する「住宅宿泊事業」を禁止することができるのか、できないのか明確な答弁を求めたい。
 

回答【住宅都市局長】
○住宅宿泊事業法については,居住の用に供されていると認められる住宅について,適正な管理業務などを課すことにより,民泊を可能とするものであり,管理規約上の「もっぱら住宅として使用する」という規定では,同法による住宅が含まれると判断されるため,民泊を禁止することができないと国土交通省の見解が示されている。
 

問【栃木】
5.民泊新法による事業者届出の受付が3月15日から福岡県生活衛生課を窓口に始まったが、事業者届出を希望する者が自宅マンション専有部分を宿泊所とする場合、当該分譲マンション管理組合の許諾等関与する余地はあるのか尋ねる。
 

回答【住宅都市局長】
○民泊新法においては,住宅提供者が民泊事業の届出を行う際に,マンション管理規約などにおいて,民泊が禁止されていないことの確認が求められる。
(施行規則第4条第3項)
○具体的には,届出の際に,届出者が管理組合に事前に民泊の実施を報告し,届出時点で民泊を禁止する方針が総会や理事会で決議されていない旨を確認した誓約書または管理組合に民泊を禁止する意思がないことを確認したことを証明する書類(民泊新法成立以降の総会および理事会の議事録など)を添付する必要がある。
 

問【栃木】
6.国交省のガイドラインによると、届出時点で住宅宿泊事業を禁止する方針が総会や理事会で決議されていない旨を確認した誓約書、または管理組合に民泊を禁止する意思がないことを確認したことを証明する書類として、本法成立以降の総会および理事会の議事録などを添付するものとしているが、民泊に関する事項の記載のない議案書、議事録などの「禁止する意思」を積極的に読み取れない添付「書類」の取り扱いについて福岡県はどのように判断するとしているのか、伺いたい。
 

回答【住宅都市局長】
○管理規約や議事録等で,禁止する意思が明確に記されていない場合は,「管理組合に禁止する意思がない」と解され,受付せざるを得ないと聞いている。
 

問【栃木】
7.分譲マンション管理組合が意思を明確にしないまま、同マンション専有部分所有者が事業者としての届出をおこない、その後管理組合がその事実を知りえた場合、同管理組合が専有部分での民泊事業を禁ずる管理組合規約の改正を行えば、当該分譲マンションでの民泊事業は法律上できなくなるのか見解を伺いたい。
 

回答【住宅都市局長】
○届出が受理された後でも,管理規約の改正がなされた場合は,届出の要件を満たさないこととなり,事業継続はできなくなる。
 

問【栃木】
8.分譲マンションの管理組合の中には、民泊新法の6月15日施行を前に、3月15日から福岡県への事業者としての届出の受付開始を知らないところもあるのではないか。マンション居住者と民泊事業者、民泊利用者間のトラブルの発生が危惧される。したがって本市は民泊新法施行を前に事業者の届出の受付が開始された事実を周知徹底し、当該管理組合の積極的な相談助言に取り組むとともに、事業者届出の受付にあっては福岡県に対して分譲マンション管理組合の意思確認を徹底されるように申し合わせていただきたい。このことを強く要望するとともに本市の所見を伺います。
 

回答【住宅都市局長】
○管理組合への周知については,今後も関係団体と連携し周知徹底に努めていく。
○福岡県に対し,届出の際に管理組合の意思を徹底するよう申し入れを行う。
○民泊事業開始後の対応についても,福岡県と連携し,管理組合への丁寧な支援を行っていく。
 

【栃木】
 持家住宅の半分は数字の上からマンションであることから、知らないという実態については解消していただきたい。相談にはしっかりのっていただき、県が窓口のため手が届かないこともあると思うが、市長も目を光らせて住民の不安を解消して頂きたいと思います。
 

■気候変動適応策としての住宅窓の複層ガラスなどへの改修促進について
 
問【栃木】
1.これまで地球温暖化対策として家庭の省エネを進めるため、既存の住宅の窓を二重ガラスに交換することが大変有効であることを、しばしば議会で取り上げてきた。また二重ガラスへの交換は、電気代の削減などの省エネ効果だけでなく、結露や騒音の防止、さらには健康増進の面からも奨励できるものであることを紹介してきた。平成30年度から環境局が、住宅窓の複層ガラスなどへの改修促進のために、「暮らし安心・適応リノベーション促進事業」という事業に取り組むと聞いている。改修における、とりわけ省エネルギー効果の有用性については、当局もその効用が認められてきたと理解しているが、今回は気候変動適応策としても位置付けられているという、この事業についてお尋ねする。そこでまず「暮らし安心、適応リノベーション促進事業」の意義について、「適応」という言葉の意味も含めて伺いたい。
 

回答【環境局長】
○近年,極端な大雨の増加や,気温上昇による熱中症リスクの増加などが顕在化しており,これらは地球温暖化による気候変動の影響と考えられている。
○事業名にある「適応」とは,今後さらに拡大するおそれのある気候変動の影響を最小化あるいは回避することを意味している。
○「暮らし安心・適応リノベーション促進事業」は,費用や工期の面から,市民自らが身近に取り組める適応策として「住宅窓の複層ガラスなどへの改修」促進を目的としているが,
◆熱中症やヒートショックなどの健康リスクの低減の効果 だけでなく
◆住宅の断熱性・遮熱性を向上させることによる,省エネルギー効果 更に
◆結露や騒音の防止による快適性の向上などの効果 があると考えている。
 

問【栃木】
2.つぎに、この事業では市民モニター制度を導入するとしているが、そのねらいについてお聞きしたい。
 

回答【環境局長】
○「住宅窓の複層ガラスなどへの改修」については,これまでも地元の事業者と協力し,断熱性の向上効果などをPRしながら,市民に改修を呼びかけてきたが,あまり改修意欲の増進に結びついていると言えない状況があった。
○そのため,本事業では住宅窓の改修経験者などに市民モニターとなっていただき,工事費用や改修効果などについて「生の声」を把握し,それを情報発信することで,より多くの市民の改修意欲を高めることが出来るものと考えている。
 

問【栃木】
3.ところで、福岡市が促進したいと考えている「住宅窓の改修」については、住宅の省エネ改修の対象として助成制度が国や他都市で事業化されているが、それらの事業内容の現況について聞きたい。
 

回答【環境局長】
○国の助成制度は,住宅全体の断熱性を高めることを目的に,ガラスや窓の交換や,床・天井・壁への断熱材等の貼付などの改修に対する助成が行われている。
○また,他の政令指定都市における,住宅窓の複層ガラスなどへの改修を含む助成事業については,平成29年度現在,20政令市中9市において実施されている。
○なお,国の助成制度については,「集合住宅の窓改修においては,全ての窓の改修を行うこと」「住宅全体の一次エネルギー消費量の内,暖冷房エネルギー削減率が15%以上となること」という要件があり,寒冷地などで住宅全体を改修して暖房効率を上げるなど,省エネを主眼とした制度である。
そのため,福岡市の目指している,市民に身近で取り組みやすい『1か所からでも出来る住宅窓の改修』に期待される,冷房効率の向上や,結露防止による快適性の向上といった観点からは,活用しづらい制度となっている。
 

問【栃木】
4.では、そのような状況を前提として、まず福岡市における持家住宅のうち、新築、既存(中古)別に、複層ガラス窓を装着した戸数と普及率を伺いたい。つぎに持家のうち、集合住宅、戸建住宅の別に、複層カラス窓の装着戸数と普及率を聞きたい。
 

回答【環境局長】
○福岡市内の全ての住宅における,複層ガラス等の普及率に関しては,1割強であるが,総務省の「住宅・土地統計調査」最新版(平成25年度)統計において,調査直近2か年(平成24・25年)に建築された住宅を「新築」と定義すると,
福岡市の新築で持ち家の住宅の戸数は,約8千戸であり
そのうち,複層ガラス等を有している戸数は約6千戸であり
普及率は約75%である。
既存住宅の持ち家の戸数は,約26万戸であり
そのうち,複層ガラス等を有している戸数は約5万8千戸であり
普及率は約22%である。
 
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○また,
福岡市の持ち家である集合住宅の戸数は約13万2千戸で
そのうち,複層ガラス等を有している戸数は約2万6千戸であり
普及率は約20%である。
一方,持ち家である戸建住宅の戸数は,約14万戸で
そのうち,複層ガラス等を有している戸数は約3万8千戸であり
普及率は約27%となっている。
 
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問【栃木】
5.データの数値から、福岡市のすべての住宅における複層ガラス窓の普及率は1割強と低い状況ではあるが、持家については、新築住宅では7割強の複層ガラス窓が導入され、既存住宅の普及率をかなり上回っている状況がわかる。わたしは、そのような福岡市の状況を踏まえ、断熱性の向上に関して、外壁や天井などの改修を必要とせず、もっぱら窓の改修のみで省エネ等の効果を実感できる集合住宅にこそ改修を行うべきであり、対象としては比較的改修しやすい「持家である集合住宅」をターゲットに促進を図ることが重要だと考える。賃貸住宅では改修が難しい状況も考えられるだろうし、先の答弁によると市内の集合住宅の持家戸数は13万2千戸で持家戸建の戸数とほぼ同規模であり、改修ニーズのある集合住宅の既存住宅はまだまだ多いと思われる。平成27年4月上旬に二重ガラス窓を自宅に入れた私自身の経験を話したい。結露防止と保温など快適性を得るために二重ガラス窓を取り入れた知人の勧めから踏み切ったが、自宅は集合住宅だが、管理組合も協力的でスムーズな改修をおこなえたこと。結露とカビの発生に悩まされたのが全く解消されたこと。遮音性に優れ、道路を行きかう車の走行音など「都市騒音」が気にならなくなったこと。保温性については使用電力量、使用料金の低減など経済性として顕著に表れ、とりわけ冬季に効果を示したことを客観的にパネルで説明させていただきます。
【パネル説明】
①電気料金の28~29年度平均減少額 ▲23,234円/基準26~27年度平均
②夏季に暑く(+3.4度)、冬季に寒い(-2.2度)平均気温の顕著な波のなかで、冬季に顕著の減少額
③再生可能エネルギー賦課金 26年度4,224円、27度7,817円、28年度10,244円、29年度10,920円(3月分除く)
④電気使用量 4,509kwh/28~29年度平均(基準年次比較 ▲14.8%)
⑤国補助制度の要件(エネルギー減少率▲15%)
住宅の省エネ改修工事による固定資産税の減税要件(工費50万円以上)
⑥自宅(H6.3新築入居、22年経過後導入)複層ガラスの全窓装着費用40万円で回収期間は17年。国補助10万円の場合の回収期間は13年。
 
わたしは、平成29年3月の条例予算特別委員会総会質疑で、「健康増進効果を考慮すれば、省エネ投資の回収年数が光熱費削減のみを考慮した場合に比べて、大幅に短縮される」という国土交通省の報告を紹介したが、時宜を得て「気候変動への適応を推進し、現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与する」ための気候変動適応法案が今国会に上程されています。そこで質問ですが、気候変動への適応にもつながる「健康維持」などの効果について、国等の所見についてお尋ねしたい。
 

回答【環境局長】
○環境省においては,地球温暖化対策のための国民運動「COOL(クール) CHOICE(チョイス)」の取組みの中で,住宅窓の改修などによる断熱性の向上は,熱中症やヒートショックの予防に効果があるものとして,ホームページや広報紙で広く改修促進を呼びかけている。
○国土交通省においては,平成26年度より「住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する調査」への支援を行っており,その調査の中間報告によると,断熱改修を実施した住宅室内環境と,血圧など健康関連事象には関連が確認されている。
 

問【栃木】
6.最後に、複層ガラスなどへの住宅窓の改修促進については、気候変動の影響による健康被害の回避・軽減などの「適応策」としての観点からも、市民モニター制度の導入による多面的なニーズを捉えようという意欲的な事業だと理解する。
【平成29年度市政アンケート調査結果報告(概要版)H30.3.6広報課 の紹介】
①複層ガラス窓などの導入状況について(n=331)「一部でも導入している(34.1%)」「導入していない(49.9%、n=165)」
②導入していない理由「改修するために費用がかかるから(77%)」「集合住宅のため、管理組合などの同意が必要だから(33.3%)」「費用に見合う効果があるかわからないから(29.1%)」
したがって複層ガラス窓装着の普及には、とりわけその経済性に着目する必要があることから、本市は国に対して省エネに加え「適応策」に寄与する現実的かつ効果的な補助制度に改善されるよう働きかけるとともに、平成30年度の市民モニター制度による調査実績を踏まえて、国の補助だけでは応えきれない事案に対する本市独自の補助制度について、その導入を視野に入れて取り組むべきだと考えるが所見を問う。
 

回答【環境局長】
○国の助成制度については,住宅窓の部分的な改修も対象に含め,福岡市が目的としている熱中症などの予防や,結露防止等による快適性の向上に資するものとしても活用しやすい助成制度となるよう,改善の要望を行っていく。
○また,議員からご指摘があった市政アンケートの調査結果をふまえ,
・「管理組合などの同意」が得られず改修の支障とならないよう,集合住宅へ周知を強化し,              
・「健康・快適・省エネ」などの住宅窓の改修効果については,市民モニターを活用して広く広報・啓発を行っていくこととする。
また,集合・戸建の双方を含む,福岡市内の全ての住宅においては,複層ガラス等の普及率が1割強という実態をふまえ,適応策の重要性と合わせて市民の認知度向上を図ることから始め,本市独自の補助制度の導入については,今後,検討していくべき課題であると考えている。

 

 

過去の質疑応答

■2016年10月7日 決算特別委員会総会質疑
■2016年3月7日 平成28年度福岡市予算議会 補足質疑応答全文
■2015年9月11日 一般質問 質疑応答全文
■2014年9月9日 福岡市雇用特区 質疑応答全文